一般社団法人なないろの始まりは、福祉事業ではありません。
家族の経験から始まりました。
私の2歳下の弟は、交通事故によって高次脳機能障害となりました。
事故の前と外見が大きく変わらなくても、記憶や注意、感情の調整などに変化が生じ、それまでの生活が同じようには続けられなくなることがあります。
本人が抱える困難だけでなく、そばにいる家族も、何が起きているのか、どこへ相談すればよいのか分からないまま、日々の生活に向き合うことになります。
私たち家族も、そこから始まりました。
家族の声を、外へ届ける
2001年に始まった脳外傷友の会「しが」の活動は、2004年頃から、母・岡本律子を中心に、高次脳機能障害のあるご本人とご家族の会として引き継がれていきました。
母は、自分の思いを語るというより、本人や家族の声を聞き、それを言葉にして外へ届けてきた人です。
外見から分かりにくい障害であること。
本人の努力だけでは解決できないこと。
家族だけで抱え続けることには限界があること。
医療、福祉、行政、教育、就労など、多くの人に知ってもらい、地域で支える仕組みが必要であること。
一つひとつの声を、家族の中だけに置かず、地域や関係機関へ伝えてきました。
思いだけでは、続かない
家族会の活動を続ける中で、相談を受けるだけでは解決できない課題も見えてきました。
働く場所が必要な人。
日中を安心して過ごせる場所が必要な人。
自宅での生活に支援が必要な人。
家族と離れて暮らす場所が必要な人。
本人と家族が地域で暮らし続けるためには、思いを伝えるだけでなく、実際の支援を形にする必要がありました。
思いだけでは、続かない。
その判断の延長に、2016年、一般社団法人なないろが生まれました。
原点を忘れずに
現在のなないろには、就労、子どもの支援、居宅介護、住まいなど、それぞれ役割の異なる事業があります。
しかし、事業を増やすこと自体が目的ではありません。
目の前のご本人とご家族に、今どのような支援が必要なのか。
その問いから始まり、必要なものを一つずつ形にしてきました。
なないろの原点は、今も変わりません。
高次脳機能障害のある本人と家族の声を聞き、地域の中で孤立しないよう、必要な人や制度、支援をつないでいくこと。
これから法人が成長し、次の世代へ引き継がれていくとしても、この原点だけは失ってはいけないと考えています。
一般社団法人なないろ
代表 岡本 憲明

